バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

バレエヨガインストラクター三科絵理

「体の内側への意識」を研ぎ澄ませ、集中力を高めようー ボディスキャン(1)

わかっているようで、わからない「体の内側」の感覚

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ヨガを始めたい、深めていきたい、という人にとっては、「体の内側に意識を向けること」が大切なキーワードになります。

でも「”体の内側”ってよく聞くけれど、一体どんな風に感じ取ればいいのだろう?」と思っている方もいるかもしれません。 私もかつてはそうでした。

バレエを長年続けてきた後にヨガを深めてきた私が、役立ったことは、ヨガでよく行われる「ボディスキャン」です。

いつでもどこでもできること。

そして、ふだん無意識で眠っている細かな体の意識(身体意識)が研ぎ澄まされること。

瞑想がなかなか集中できない方でも、取り組みやすいと思います。

全身に意識を向けているようで、実は向いていないかもしれない

ボディスキャンを説明する前に、「体の内側への意識」「身体意識」を考えるうえで、脳の構造を紹介します。*1

体の神経系は、体の各部位とつながって、運動を計画したり実行したりしています。

実は、その重要性・必要性に応じて、脳の中の神経・ニューロンの大きさを割り当てています。

その様子を図示したものがこちらです。

脳の一次運動野をマッピングしたホムンクルス

脳の断面の形にそって、ホムンクルス(小人)が描かれているのがわかるでしょうか。少し不気味ですが・・・

繊細で高度なコントロールが必要な部位については、多くの神経回路とニューロンを占めていて、 逆に、低いレベルでのコントロールで十分な部位は、わずかしか占めていないのです。

体の大きさに関係ないのです。

特に、顔、舌、手の指などが大きく占めていて、逆に上半身、骨盤、おなか、太もも、ふくらはぎなどはほんのわずか。

みなさんも、自分の体に対するイメージを振り返ってみてください。

神経が集まっていて、感覚が敏感なところもあれば、逆にふだん意識を向けないところも多くあることでしょう。

  • 手全体や、顔、舌には自然と神経が集まっているために高度な制御がしやすい

  • 上半身・体幹・脚などの「姿勢を保つ筋肉」は、さほど重要視していない

この2点が大きなポイントです。

脳内での体の意識は、訓練で拡張することができるのか

先のホムンクルスを見てしまうと、運動で鍛えることは難しそうと思ってしまいそうですが、そんなことはありません。

体の意識(ここでは身体意識と呼ぶことにします)は自分の意思で拡張することができるのです。

脳はエネルギーに満ちていて、適応性があります。それぞれのニューロンの数は増えることはありませんが、新たな要求を満たすために、既存のニューロンの間で回路がすばやく作られるのです。*2

わかりやすい例は、肉体の限界を超えて制御していくアスリートたちでしょう。

アスリートの身体意識は、限界を拡張させてきた賜物

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%AD%E3%83%BC#mediaviewer/File:Suzuki_Ichiro_runs_to_homeplate.jpg

アスリートは、一般には潜在的に眠っているような細かい身体意識を、目覚めさせて拡張しています。

人間の常識を超えて、肉体の限界に挑戦していく先に、脳の運動野も変化しつづけているのです。

その際のイメージトレーニング、イマジネーションの力は想像以上に大きいのです。 脳の適応性は、自らが想像している以上に大きい。

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バレエのトウシューズも、「よくこんな形で立てますね」と言われますが、訓練の先に身体意識が鍛えられた例です。もちろん体の特徴にもよりますが、そもそも「無理」と思ったら立てません。

アスリートの細かいレベルに達しなくとも、パフォーマンス性の高い体の使い方・身体意識を手に入れることは、努力次第で誰でもできると思います。

身体意識が高まると、パフォーマンスの精度が高まるだけでなく、肉体に宿る精神性も高められるように思います。

ボディスキャンのやり方は、次に続きます。

「体の内側への意識」を研ぎ澄ませ、集中力を高めようー ボディスキャン(2) - バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

*1:脳科学は専門ではないのですが、一般的な知識として知っておいても損はないかと思いますので紹介します。

*2:レイ・ロング医学博士「図解YOGAアナトミー アーサナ編」監訳中村尚人,2012年